悪役教師は、平和な学校生活を送りたい

「レーネは、ツェツィーリエを守れ! ルッツとエーリカ、おまえたちの土魔法で足場を崩せ!」
「う、うん!」
「やってみるわ……!」

 敵が敏捷性に欠けている魔物だということで、リュディガーはすぐに作戦を練っていた。
 ツェツィーリエの守りをレーネだけに任せ、ルッツとエーリカの土魔法で敵の足止めをさせる。

 二人が協力して魔法を放つと、ぐらりと象魔物の体が揺れた。すぐにリュディガーが炎を纏わせた剣で斬りかかるが、象魔物の振り上げた巨大な前足に阻まれてしまう。

「ちっ……!」
「リ、リュディガー! あたし、あの左足を沈めてみるわ!」
「無茶するなよ、エーリカ!」
「ぼ、僕も協力する!」

 土属性の二人が地面に魔力を流し込むと、がくん、と象魔物の左後ろ足が地面に沈んだ。土魔法によってそこだけ地面がへこみ、バランスを崩させたのだ。

「ツェツィーリエ、あの魔物の脳天に雷を落とせるか!?」
「え、ええ! リュディガー、もう少し魔物を転ばせなさい!」
「ああ。……うわっ!?」

 片足が沈んだ象魔物が、ぶんっと長い鼻を振り上げてきた。
 リュディガーはなんとか避けたが、長い鼻は鞭のようにしなり――無防備なツェツィーリエを狙う。

(危ない……!)

「ツェリさん!」

 すぐにレーネが魔法剣を地面に突き立て、象魔物の体高ほどの氷の柱を発生させた。
 うなる長い鼻はツェツィーリエではなくて氷の柱にぶつかって、ぎりぎりとかみ合い――バリン! と派手な音を立てて柱が砕け散った。

「わぁっ!?」
「きゃっ……!」
「え、嘘……ルッツ君、エーリカさん!」

 粉々に砕けた氷の破片が降り注いだのは、土魔法に専念していたルッツとエーリカのもと。

「ちっ……! 二人とも、伏せろ!」

 すぐにリュディガーが手のひらから放った炎で氷は解けるが、ルッツとエーリカはへたり込んでいるし、自分の魔法が原因で仲間を傷つけそうになったレーネも青ざめている。

「っ……おいこら、レーネ! ぼさっとすんな!」
「で、でも、私……う、うぇ……」

(……いけない! レーネの体調が……!)

 レーネは低血糖気味だが、その他にも緊張したりプレッシャーが掛かったりしたら動悸が激しくなり、動くのも辛くなるという症状も持っていた。

 へたり込んだレーネをすぐさまツェツィーリエが抱き寄せようとしたが、リュディガーが「馬鹿野郎!」と叫ぶ。

「おまえの役目は攻撃のための準備だろう、ツェツィーリエ!」
「でも! レーネが!」
「っ……おまえたちは、一旦下がっていろ!」