目が覚めると、視界に映ったのは自身の部屋の天井…ではなく、見慣れぬ天井だった。

 寝ぼけ眼で数秒の間その天井を見つめ、ハッと我に返り勢い良く起き上がる。

 見覚えの無い部屋。

 …違う。見覚えはある。

 見慣れぬ部屋。―――凜さんの家の一室。

「なん、で?」

 呆然としていると扉が開いた。

「起きたかしら?」

 入ってきたのはもちろん家の主、凜である。

 美玖は混乱している頭の中を整理するのに必死だった。


 昨日の夜、私はちゃんと自分の家のベッドで寝たはず…

 なんで?


 疑問ばかりが浮かぶ。

 だが、やがて思いあたった事が一つ。

 震える唇で凜に訊ねた。

「アイツ、に…会ったんですか?」

「…アイツって、レライエの事かしら?」

 逆に問われる。

 会ったんだ。

 アイツに…

 凜の冷たい、凍るような視線が美玖に向けられた。

「あなたは、いったい誰なの?」

 冷たい言葉が心に突き刺さる。

 何か言おうとして口を開きかけるが、結局言葉は出てこなかった。

 唇を引き結び、顔を背けた。

「…すみませんでした。失礼します」

 それだけ言うとベッドから降り、扉へ向かおうとする。が、

「待った」

 凜が扉に手をつき、美玖の行く手を阻んだ。

 美玖は仕方なく足を止め、恐る恐る凛を見やる。

「帰さないわよ?ちゃんと話すまでは」

 凜の変わらぬ冷めた瞳が美玖を捕らえた。