朱の悪魔×お嬢様

が、部屋を出て行った上條の声で男の動きは止まった。

「な、何だ貴さ」

 ブツリッと電源が切られたかのようにそこで上條の声が途切れる。

 と同時にバタッと誰かが倒れる音。

 その場にいる全員、凜も不思議に思い、首を扉の方へ向けた。

 おそらく上條が開けっ放しにした扉から見える廊下。

 流れてくる―――赤い、液体。

 息を呑む音がハッキリと聞こえた。

 いつの間にか静寂が満ちている。

 何も聞こえない。

 さっきまで騒がしかった上の方からも物音一つ聞こえなかった。


 カツン…カツン…カツン…


 誰かの足音が辺りに響く。近づいて来る。ゆっくりと。


 カツン。


 急にピタリと足音が止まった。

 だが、扉の前には誰もいない。

 扉に一番近かった男の首が―――無くなっていた。

 ゴトリと床に転がる首。さっきまで男の身体に繋がっていた首。目が、見開かれていた。

 男の首があった場所、切断面から血飛沫が上がる。

「う、うわあぁああぁぁぁ」

 別の男の悲鳴。

 それも途中でブツリと切れる。

 また、男の首が無かった。

 いや、あった。

 男の足元に転がっていた。

 血飛沫を上げながら倒れた男の陰に人が立っている事に気付く。

 そこでやっと犯人が姿を見せた。


 ―――紅い悪魔。


 何故?
 
 何故ここにいる?