不意に視界の隅でキラリと光るものが見える。

 視線を下に向けると、父様の指輪が光の反射によって光っていた。

(父様…私に生きろと言っているのですか…?)

 なんとなくそう思っただけだった。

 何故そう思ったのかは自分でも分からない。

 生きてどうする?このまま、ただ生きてどうするのだ?

(…別に理由なんか、いらないのかしら?)


 ただ生きているだけでも、いいのかな?父様…。


 諦めきり、無抵抗だった身体に力を入れる。逃げれるか分からない。でも、今なら―――

 足に力を込め、ガンッと踵で思いっきり“ヤツ”の足を踏んだ。

「っ?!」

 いきなりの事に驚いたのか、腕をねじ上げていた力が緩む。

 その隙に力一杯体当たりをし、完全に緩んだ拘束から抜け出した。

 “ヤツ”と距離をとってから、振り返る。

「え…?」

 拍子抜けしたような声が漏れた。

 “ヤツ”を見た凜は、逃げなくてはいけないにもかかわらず、その場に固まってしまう。