「だめだめだめーっ!」

 目を開けると、下には木が沢山並んでいました。つまり、森です。
 枝が刺さってしまったらどうしましょう。
 そんな夢の終わりがあってはなりません。目覚めた先で、恐怖でいっぱいになってしまいます。

 メキメキ、パリパリ、ドシンッ

 私は木々の合間を抜いながら地面に到着しました。
 もっと綺麗に着地できると思っていたのに、人生は甘くないようです。
 私は「いたた…」と、尻もちをついたところを撫でながら何とか立ち上がります。
 夢とはいえ、夢とはいえ、生きていてよかった。
 そんな気持ちになりました。

「……何、やってるの?」

 そんな時、木の幹にもたれかかっていたらしい、美しい青年が声をかけてきました。
 周りには、大きな音に驚いた動物達が、彼の頭の上を、体の上をパタパタと走り回っていました。
 私は素直に事情を説明すると、彼は納得したように膝の上のうさぎを撫で始めます。

(納得してしまいました……)

 これも夢、だからでしょうか。

「あ……、あっち」
「あっち……?」
「あっちに行けば、お城がある」

 青年はふわり、と指を差しながら言いました。
 指先には細い道があり、そこを歩け。ということみたいです。

「ありがとうございます!」

 私はお辞儀をすると、その場を立ち去ろうと道の方へ向かおうとしました。

「……シラユキ。少し先に、……多分、シェルディがいる」
「……っ! 私はマリアです! またお会いしましょう、シラユキさん!」

 私はもう一度、お辞儀をしました。
 シェルディさんにもご挨拶しておこう、私は先を急ぐことにしました。

 シラユキさん、見た目からは想像できませんでしたが、“シラユキ”と名乗るくらいですから、【白雪姫】でしょうか。
 白い肌に、一目見たいだけで綺麗なお顔立ちを考えると、おそらくそうなのでしょう。

 ここはもしかして、おとぎ話の住人が住んでる世界?

 私はそんな事を考えながら歩いていきます。