おとぎ話と秘密の物語~あべこべ世界で人助けをする事になりました~

「そうだ。ねぇ、マリア海入りたいんでしょ?」
「え、入りたい……と言われれば入りたいですけど、着替えも何も持って来てませんし」

 やったとして、足元だけ浸かる程度の予定でした。
 ポシェットに少量のお金――あ、このお金はお城で持っておきなさいと言われたお金です。
 と、先程頂いたブリオッシュのみしか手元にありません。

「まぁまぁ、僕に任せてよ」

 セインさんはそう言うなり、私の手を引っ張るようにして、海の方へずるずると向かいます。
 私は引かれるがままお尻を上げて、膝立ちで冷たい海に足を踏み入れました。

「ま、任せるって何、を!? きゃあっ」

 浅瀬もそこそこに、どぼんと顔まで浸かってしまいました。

 溺れてしまいます――!

「……って、あれ……?」

 全然苦しくありません。
 しかも、目を開けてしまうことだって可能でした。

「流石夢」
「いやいや、これは僕の力だから」
「???」

 セインさんは私から手を離します。
 するとどうでしょう。

「――っ!?」

 ごぼごぼと息を海中に吐き出し、今にも窒息死してしまいそうになりました。
 例え夢でも無理なものは無理みたいです。

「……ね? だから絶対離しちゃダメだよ」

 すぐさまセインさんは私の腕を掴んで言います。
 ――離したのはセインさんです。