セニシエさんは首を傾げます。

「あ、えぇとっ遊び相手をしろって、お屋敷の方に言われたんです」
「なるほど……」

 言われて納得したのか、手のひらに軽くこぶしを打ち付けました。

「あっセニシエさんのお仕事? 自由時間? をお邪魔し続けても悪いですし、そろそろ行きますよ」
「ん? あぁ、気にしなくてもいいんですよ。どうせ“逃げてきてるだけ”なんで」
「逃げてる……?」
「えぇ、使用人ってのは色々と面倒なんですよ。たまには“あいつら”にもわからせてやった方がいい」

 なんだろう、この、ゾワッとくる感覚。
 セニシエさんは笑ってるのに、笑ってないです。

「あ、あの……っ」
「なんですか?」
「何かあるのでしたら……、相談に乗りますよ」

 私はセニシエさんに言いました。

「て、初対面相手に相談できるわけないですよね……っあはは」
「――そのうち頼むかも」
「あれ……?」

 自分から言い出したものの、意外な返答に、私は少しだけ戸惑いました。

「ははっ、冗談ですよ。またお話しましょうね」

 セニシエさんはそう返事を残し、道の先を行ってしまいました。
 私はその背中を見つめて思います。
 夢の世界でも悩みを持つ人達はとても多くいるということを。
 カルアさんとの約束もありますし、もし自分に何かできるのであれば協力したいなと、そう感じました。