私は一人、暗闇の中にいました。
 耳を済ましてみても何も聞こえず、他に人などいないことがわかります。
 とぼとぼと行く宛てもなく私は歩くことにします。ただ、コンコンと足音が響くので下は床なのだと感じました。
 目が慣れる気配もない程暗いので、何かにぶつかったらごめんなさい。
 そんな気持ちで歩を進めます。

 ――幾らか経った頃、トントン、と肩を叩かれたような、少しばかり怖いとさえ感じる感触を覚えました。

「ど、どなた……?」

 私は後ろを振り返らずに言います。
 すると“二人”の話し声が聞こえてきました。

「こっち向いて欲しいな」
「そうだよ。お話しよう」

 私は言われるがまま、くるりと後ろを振り向きました。
 そこには、そっくりな顔をした男の子が二人並んでいたのです。暗くて見えないはずなのに、何故か、しっかりと姿を捉えることができました。双子だと言う彼らは、私の肩を軽く叩きながら嬉しそうに言います。

「夢の世界にようこそ!」
「会いたかったよ、マリアちゃん」

 マリアと呼ばれた私は、きっと、そんな名前だったのだと思います。
 真っ暗闇の中でそっくりな双子と出会い、私は歓迎されました。
 二人は左右から私の手を取ると、

「俺はカルア、よろしくな!」
「僕はモランゴ、よろしくね」

 そう言って私を連れて歩き始めます。
 カルアさんは赤と緑と黄色の派手な格好――一言で表すなら、【ハーメルン】のような見た目。
 モランゴさんは大きなハットにお洒落なスーツを着ています。アリスに出てくる【帽子屋】かしら。
 そんな事を思いながら、大人しくついて行くことにします。
 二人は楽しそうに、そして、私をこれから面白い世界に連れて行ってくれるような、ワクワクを与えてくれました。