触れたい、cross

「海乃さん、苺、食べよー?」


何事もなかったように、私から離れた伊織くん。


「…あ…、そう、だね…。洗ってくるね」


すっかり空になった食器を重ねて持ちながら、立ち上がる。


「はい。それ、こちらへどぞー」


伊織くんが、私の手から、食器を奪ってしまう。


「オレ、片付けするから、海乃さんは苺をおねげーしますー」


手のひらで、それぞれの持ち場を指すから、お言葉に甘えて、苺を洗う。


「海乃さん、さー、ほんっとに丁寧だよねー」


洗った苺の水分を、キッチンペーパーで吸いとっている私の手元を見て、食器を洗いながら言う、伊織くん。


「そーかなぁ?水分が残っていないほうが、美味しいでしょ」


そんなもん?


「そー、思うけど」


なんて、ゆるゆると続く、会話。