傾国の貴妃

「陛下!」


叫んだのはエリザベート様。

何故、と問うかのようにその瞳を大きくし、ギルを見上げる。

私はというと突然のこの展開に着いていけず、ただギルの胸の中で身を固くするだけ。


「……納得出来ませんわ」


屈辱に歪んだエリザベート様はその強い瞳を私へと向ける。

慌ててギルの胸の中から退こうとした私をギルは余裕顔で阻止した。

さらに密着した私たちを見て、エリザベート様の表情にも隠しきれない怒りが表れる。

その怒りの矛先はもちろん私で…――


「私に逆らう気でいるのなら、もちろんそれなりの代償は覚悟の上なのであろうな?」


がっしりとまるで離さないと言うかのように私を抱き寄せるギルから発せられた言葉は、その胸の温かさとは対称的であまりにも冷たく、畏怖の念を抱かせるにはあまりにも十分すぎた。