傾国の貴妃

「ご機嫌よう。ルシュドの姫様」


くるりと背を向けた私に追い討ちを掛けるかのように、エリザベート様が笑う。

回転した拍子に長く美しいシフォンのドレスがふんわりと宙を舞った。

それを見て、また悲しさが増す。

ギルと共に夜を過ごすようになってからもらったたくさんのドレスや宝石。

これもその一つで。

どれも今まで私が身に付けていたものよりもずっと高級で素敵なものばかり。

ギル。

ギル。

ギルバート…――

やっぱり、私じゃダメなのかな?


「――……きゃっ」


……瞬間、歩き出そうとした私の体が傾いた。


「去るのはお前だ。サマルハーンの」


そのままポスンと温かく逞しい胸の中に収まる。

頭上から響いたのは、聞き慣れた声。

思わず、驚きに目を見張る。

ぐいと力強く私の腕を引いたのは――