傾国の貴妃

「ローラ」


聞き慣れた低く甘い声が私を呼んだ。

思わず、顔を上げる。

途端、エリザベート様の睨み付けるかのように鋭い視線が私を貫き、すぐに私の視線は地面へと戻った。

いつものこと。

そう、最近ではそれも慣れたことだったはず。

ただ、動揺してしまっただけ。

エリザベート様がギルの正室に……?


「……ご機嫌麗しゅう。陛下、エリザベート様」


いつもより少し控えめな声で頭を下げた。

長く広がったスカートの両脇を少し上げ、軽く膝を折る。

姫の挨拶はあくまで優雅に美しく。

感情は表情の奥底へと仕舞い、きつく鍵をかけた。

小さく、深呼吸。

ゆっくりと上げた視線の先。

今度は違う意味で顔を心臓が跳ねた。

何だか不機嫌な顔をしたギルがジッと私を見つめていた。