傾国の貴妃

私たちは似た者同士、互いに依存し合っていたのだと思う。

同じ痛みを持つ私たちは、互いにその痛みを舐め合い、慰め合う。

そんな関係。

もしも、もっと早くにギルが私を求めてくれていたなら、私は喜んで私の全てをギルに捧げていたのかもしれない。

いや、捧げていただろう。

愛情に飢えた私は、確かにギルを必要とし、更なる温もりを欲していたから。


「駄目だよ…」


「何故」


「もう遅いんだよ」


だって、きっと私は今ギルの温もりを知ってしまったら、ギルを離せなくなる。

ギルと離れて、この城で生きていくなんて到底無理。

ギルに幸せになって欲しい。

ギルに王としての勤めを全うして欲しい。

そのためには、きっと私は邪魔な存在でしかない。

ルシュドの血を継ぐ私に、高貴な赤子を生むことなんて出来ない。

それはわかっているのに。

今ギルに抱かれてしまったら私は、きっと他の姫君を抱くギルを赦せなくなるだろう。

自分だけを愛して欲しいと、縋ってしまう無益な私…