傾国の貴妃

余計なこと…?

本当にそうなのだろうか。


「俺が言ったことを覚えているか?」


「――言ったこと?」


いつのことを指しているのか。

わからず首を傾げる私の頬を、何か生暖かい物が這う。

そのまま耳元に吐息を感じ、びくんと震える。


「お前を抱く」


瞬間、過去がフラッシュバックして、頭にあの時のギルの声が響いた。


――俺は好きになった女以外を抱く気はない。


それは初めて私の部屋を訪れた時に、ギルが放った言葉。

そこから始まった私たち二人の奇妙な関係。

もしかして、と思う。

なんで、と胸が震える。


「…駄目、だよ…」


精一杯の理性を以て口に出す。

酷く真剣な眼差しを私に向けるギルに目眩がした。

こんなこと、今までに初めてだった。

何度も同じベッドで朝を迎えていた私たちだけど、それは文字通り、同じベッドで互いの体温を感じながら眠っていただけ。

ギルが私を求めてくることなど、今までになかったのに。