傾国の貴妃

エリザベート様や他の姫君たちは怒っていたのだ。

国を無遠慮に乱そうとする私に。

内乱の元になりうる私に。

無知な私は、そんなことも知らなくて…


「だから、駄目だよ。ギルは王様なんだから、国民の不安を煽るようなことしちゃ駄目なんだよ。私なんかといたら…、ギルが駄目になっちゃうんだよ」


精一杯、だった。

そこまで言って、口を噤んだ。

浮かんでくる涙を流したくなくて、わざと上を見上げた。

ギルは何も言わない。

ただ、ジッと私を見つめている。

そのまま、数秒。

私にとっては長すぎるまでに感じる時間。

やがて、そっと溜め息をつくのが分かった。

いろんな感情が混じっているような、そんな溜め息。


「――言いたいことは、それだけか」


「…うん」


「ローラの気持ちは、言った通りか」


「…うん」


「そうか。わかった」


やけに、あっさり受け入れたギルに、涙腺がさらに緩む。

ギルはきっともうこんな風に二人では会ってはくれない。

会いにきてくれない。

わかってる。

自分が望んだことなのに、いざそうなる思うと私は…

私は…


「…阿呆か」


「――んぎゃっ!」


突然の浮遊感。

思考回路は緊急停止を余儀無くされた。