傾国の貴妃

シルフィード王国というのは、言わずもがな、大小様々な邑の連合体から成り立っていて。

今何の戦もなく、安全な世界を享受できているのは、今ある邑の階級の優劣の均衡がそのまま保たれているから。

サマルハーンを頂点とするこの構造。

サマルハーンは当然、軍事力も人口も作物の収穫量までもが群を抜き、事実上シルフィード王国を動かしていると言える。

では、もしもこの均衡を崩せばどうなってしまうのか。

この権力構造に変化を起こしてしまったら。

例えば、次の皇太子がサマルハーンではなく別の邑の血筋を引く者になってしまったとすれば。

…間違いなく、そこに争いは生まれる。

新たな皇太子の誕生に付き従う者。

サマルハーンという大きな勢力に付き従う者。

内乱が起こるのは必須。

だから、人々は危惧する。

私の部屋へ通うギルを。

エリザベート様や他の姫君たちを疎んじるギルを。

――下手したら、ギルに対する信用さえもなくしてしまうかもしれない。