傾国の貴妃

言いたくない。

でも、言わなければならない。


「…ギル、ちゃんと他の姫君たちのことも大切にしなきゃダメだよ。ギルは王様なんだから、将来のことも考えて、子供も沢山作ってさ」


私の言葉にさっきから何も言わないギル。

でも、好都合だった。

一気に言ってしまいたかったから。

一気に言ってしまわなくちゃ、きっと私はもうこれ以上言えない。

…言いたくない。


「それにね、ルシュドは駄目だよ。ルシュドは最西端にある、小さな邑でしかないのに。そんなの駄目だよ。きっと国民だってそんなの望んでないし、変な噂立ってしまってからでは、遅いんだよ」


はっきりと思い知った。

このお茶会で。

姫君たちの暗黙のルールの理由を。

エリザベート様を頂点とすべき理由を。


「…より高貴な血筋を継承していくことが、国の安泰に繋がるんでしょ」