傾国の貴妃

「ローラ様!」


部屋に戻った私を一番に迎えたのは、今にも泣き出しそうなシンシアだった。

冷たい夜風に冷えた体は、シンシアによって毛布でぐるぐる巻きにされた。

ホッとしたのかその瞳からは決壊したダムのように涙が溢れ出し、「よかった…」と小さく呟く声が聞こえる。


「えっと…、ごめんね?」


シンシアのあまりの取り乱し方に、胸が痛む。


「本当に反省していらっしゃるんですか!」


ギロッと睨まれた。

散々苦情を浴びせるシンシア。

怒涛のお叱りを受け、シュンとなった私。

やっと解放されたのは、ギルが放ったこの一言。


「あとは俺が叱っておく。お前はとりあえず、湯浴みの支度を。この阿呆は随分冷えていたからな」


――私を見るギルの目が、ものすごく怖かった。