傾国の貴妃

息苦しいお茶会という名の檻からやっと解放されて、気がついたらもう外は黒い闇に覆われていた。

昼間はあんなにその存在を主張していた太陽も、もう影も見当たらない。

暇さえあれば眺めていた夕焼け空は、当然ながら今日はもう見ることができなかった。

あるのは、一面の銀世界。


「……」


なんだか自分の部屋に戻る気にはどうしてもなれなくて、なんとなくいつも夕焼け空を眺めている場所に来てしまった。

シンシアはきっと帰りの遅い私を心配している。

わかっているのだけど、どうしても部屋に戻りたくはなかった。

一人になりたかった。

一人で、ここに来たかった。

周りより少し高い位置にあるこのシルフィード城の展望台。

芝とたくさんの花に囲まれたその展望台は、私の唯一のお気に入りの場所。

そこから見える西の空の景色は、目を瞑れば瞼の裏に見えるほどに、鮮明に覚えていた。

今は暗闇ばかりで何も見えないけれど。

西の方角。

地平線のずっと先。

真っ直ぐに行くと、そこには……――