傾国の貴妃

「エリザベート様は羨ましいですわ。よく陛下とお出掛けになるのを、風の噂でお聞きしますもの。私なんて、もうずっと陛下にお会いしてないわ」


ある姫君がそう言えば。


「あら、私もよ。どんなにお誘いしても、上手くかわされてしまって…」


「私なんて、お近づきにもなれません…」


「私もです」


次々と続く姫君たちの嘆き。

少々芝居がかったような、わざとらしい溜め息。

私は何も言わなかった。

何も、言えない。


「…陛下は女性に興味がないのかしら?」


――その一言が、始まりだった。


「最近、ある一人の女性の部屋に、夜な夜な通っているという噂よ」


そう告げたエリザベート様と一瞬目が合う。


「まあ!いったいどなたの?」


また、合う。

今度は違う姫君の、射るような視線。


「たいそう、見目麗しい姫君なのでしょうね」


ちらり、ちらりと。


「ふん、遊びに決まっていますでしょう?」


投げかけられる、姫君たちの視線に。


「気に入らないわ」


今はただ…

――耐えるしかなかった。