傾国の貴妃

「では、皆様。本日はご参加頂きありがとう。それぞれに友好を深め、お楽しみになって過ごして下さいね」


お茶会は、そんなエリザベート様の一言ゆっくりと始まった。

テーブルいっぱいに並べられた、豪勢でカラフルなお菓子やケーキ。

様々な茶葉が揃えられた紅茶。

上品な言葉遣いに、浮かぶ笑み。

そんな中、私は誰とも話さない。

チラチラと時折投げかけられる姫君たちの意味深な目線にも、もうとっくに気付いていた。

姫君たちが私に何か言いたいことも。

聞きたいことも。

鋭い威圧感さえも併せ持つその視線の意味を、私は決して計り間違えてはいないはず。


「まあ、エリザベート様。本日の衣装も誠に素敵ですわ」


「あら、ありがとう。本日のために新調したばかりなのよ」


「羨ましいですわ。さすがエリザベート様」


エリザベート様になんとか取り入ろうと目論む姫君たちを見ているのは、何とも滑稽で。

上辺だけの会話が、午後の日が射し込む静かなこの空間にやけに耳に響いた。