傾国の貴妃

「今日は良い天気ね」


「ええ。本当に」


「この時期なんて、ルシュドは雪でいっぱいだったよね」


不意に思い出した懐かしい故郷の風景に、そっと目を閉じた。

目に浮かぶのは、一面の銀世界。

冷たくて、でもなんだか温かい雰囲気を持つ雪景色。


「毎日の雪かきは大変でしたわ…」


シンシアが小さく溜め息をつきながらも、懐かしそうに目を細めるのがわかった。


「私、雪が降るのを毎年楽しみにしてたな」


「ローラ様は、小さい頃雪兎を作るのがお好きでしたよね。その時期は毎年冷蔵庫いっぱいに作ってらして、料理人も困り顔でしたわ」


「あはは」


「この城の辺りは雪が少ないですわよね。あったらあったで大変でしたけど、やはりないと寂しいものですね」