傾国の貴妃

それは、痛いほどわかる感情。

その寂しさは、私の感じていたそれと一緒。


「…ギル…」


気づいたら、そう呼んでいた。

躊躇なんて、なかった。


「もう一度呼べ」


「ギル」


「もう一度」


「ギル…」


エリザベート様の言葉を思い出す。

ルシュドの分際で私の上を行くな、と確かにエリザベート様はそう言った。

これは裏切り?

これは罪?

もしかしたら、そうなのかもしれない。

ルシュドはルシュドらしく、一歩下がった位置に居るのが道理。

頭の隅で警報が鳴る。

わかっていたけれど、止められない。

名前を呼ぶたびに、呼ばれるたびに、心が軽くなっていく。

私は寂しかったんだ。


「これからはそう呼べ。敬語もいらない。俺を俺として見ろよ、ローラ」