傾国の貴妃

「…ローラは不思議な女だな」


どれくらいそうしていたのか。

泣いている私にただ黙って胸を貸してくれていた陛下がポツリと呟いた。


「お前みたいな女、初めて見た」


どう捉えていいのかわからないその言葉に、漏らしていた嗚咽が瞬間、止まる。


「涙、止まったか?」


動かなくなった私に気付いたのだろう。

陛下はそう言うと、そっと私の顔を覗き込んできた。

エメラルド色に輝く瞳に、私の泣きはらした顔が映る。

恥ずかしくなって視線を逸らそうとする私を、陛下は赦さなかった。


「あの…、申し訳ありません…」


「何がだ」


「あの、その…、みっともなく泣いてしまって…私…」


「ああ、クス」


瞬間、恥ずかしさで体中熱くなるのがわかった。

穴が有ったら入りたい…!

涙が止まった私はやっと冷静になってきて、今あった惨事にもう一度泣いてしまいそうだった。

私、何という醜態を曝してしまったんだろう…!

仮にも、この国の王に!

思い切り胸を借りて泣いて、服だって涙で汚して…