傾国の貴妃

「…お久しぶり、ですね」


当然、思い出すのは先刻のエリザベート様の言葉。

それを知りもしない陛下は、いつもと何ら変わりない態度。

当たり前のことだけど、なんだかそれが恨めしかった。


「最近、公務が立て込んでいた」


だから来れなかった。

そう言いたいらしい。

別に、理由なんていらないのに。

だって、陛下にとって私は、ただの都合のいい駒でしかないはず。

おかげで無用の反感を買ってしまった私のことなんて、少しも知りもしないんだ。

綺麗な顔は少しも疲れなんて感じさせず、公務なんて言葉も嘘のような気がしてならない。

でも、手招きする陛下にはやっぱり逆らうことなんて出来なくて、私はいつも通り、陛下の隣に腰を下ろす。

並んでソファーに座る私たちは、いったいどういう関係なのか。

聞きたいけど、聞けない。

どこにもそんな答えなんてないような気がした。