傾国の貴妃

漆黒の美しい髪。

強い意志を持った眼差し。

艶やかに誘う、真っ赤な唇。

美しく色気を放つ四肢。

サマルハーンの姫君という、この上ない待遇。

全てに於いて、エリザベート様はこの城の姫君たちの憧れだった。

私も、そんなエリザベート様を遠くで眺めていた一人。

そのエリザベート様が、今私に向けている眼差しを信じたくなかった。


「ルシュドの分際で、私の上を行こうと思わないことね」


その言葉が、麻痺してしまったかのような私の頭に思い切りハンマーで殴ってくれたような衝撃を与える。

目の前には、燃えるような瞳。

瞬間、理解する。

陛下と私のこの不思議な繋がりが、この姫様の多大なる怒りをかってしまったのだ、と――