傾国の貴妃

エリザベート様はそれだけを言うと、ちらりと私に一瞥を送っただけで、シャンパンの揺れるグラスに視線を落とす。

私は何と答えていいのかわからなかった。

だって、答えようもない。




あの日から、陛下は2、3日に一度、あるいは一週間に一度など、頻度は様々だけど、定期的に私の部屋に夜訪ねて来るようになった。

だからって何をするわけでもない。

ただ、バルコニーに出て二人、夜空に浮かぶ月を眺めたり。

あれが美味しかった、だとか、あそこは美しかっただの、なかなか城の外に出る機会のない私に、外の世界の様子を教えてくれたり。

時には懐かしいルシュドのお酒や、美しい花束を持ってきてくれることもあった。

本当に何でもない、でも確かに存在している二人の時間。

それを居心地が良いと感じるようになるまでに、さして時間はかからなかった。

きっとこれは、必然。