傾国の貴妃

「こちらにお座りになって」


勧められた席に腰を下ろすと、もう一度ぐるりと部屋全体を見渡す。

サマルハーンとルシュド。

位の違いは一目瞭然。


「シャンパンはいかが?」


「…ええ。頂きます」


アルコールは昔から嫌いではなかった。

水のように飲むことは出来ないけれど、少しのアルコールは気分を高めてくれる。

今だって、緊張で堅くなっていた私の体を解すように、喉を通る熱さが気持ち良かった。


「ここ最近、陛下はルシュドの姫様にご執心のようね」


――その言葉に、時は止まったように感じた。