傾国の貴妃

思わず聞き返した私に。


「ねぇ、そうしましょう」


と、手を掴まれてしまい、もはや断ることなど出来ないのだと悟る。

仕方なしに小さく頷いた私に笑みを大きくしたエリザベート様は、そのまま私と並んで自身の部屋へと私を誘った。


「いろいろ、お聞きしたいこともございますのよ」


一年もここにいて、初めてのことに、私の顔も困惑の色に染まる。

そんな私に笑顔のまま告げたエリザベート様の言葉は急に重みを持ち、私の背筋を凍らすような錯覚さえ覚えた。

あれよあれよという間に、私の部屋よりも重厚な扉の前まで来ると、そばに居た従者がその扉を開ける。

そこは、広い空間。

上質なカーペットに、美しく彫刻された天井。

調度品はどれも細々としたところまでに、綺麗な細工が施されている。

同じ立場でありながら、やはり階級の違いを感じずにはいられなかった。