傾国の貴妃

これは何の涙なのか。

…少し後ろめたくなるような、涙。

決して喜びだけでは表せないような、私の中のドス黒い部分がキンキンと痛む。

私は喜ばなければいけない。

シンシアと同じように、喜びと期待に胸を震わせなければいけない。

まだまともに話したこともない、若い国王陛下に抱かれることに。

たくさんの邑からやって来た姫君たちの中から、陛下が今宵の相手として私を選んで下さったことに。

大好きな生まれ故郷であるルシュドの役にようやく立てることに。







その日はいつもよりもずっと長く、暗くなっても尚、沈みゆく太陽の行方を目で追っていた。