ANEMONE〜恋に終わりを告げたなら



人は、最初の一年は頑張れる。
でも、同じ状況が何年も続いたらーー
日が経つごとに、心のどこかで「諦め」というものが増していく。


瑠維「……今はもう、どうでもいいってことか?」

「それもちょっと違うけど。……ここに写る私はもしかしたら、すでにそう思ってたのかも」

瑠維「……」


言葉が風に溶けていく。
瑠維はなにも言わず、ただ私の手の中の写真を見つめていた。


「施設で暮らしてたら、思うよ。誰かに頼って生きていくよりも、早く一人で生きていけるようになりたいって。一緒に生活しているから家族のような空間はあったけど……家族じゃない」


いくら真琴さんや志帆さんたちが優しくても、暖かくてもそれは決して家族とは言えない。


親のような存在だと思っても、親ではない。


「一緒に暮らしていてても、そう思っちゃうんだから……ここに写る人たちは血の繋がりはあっても家族とは言えないんじゃないかな」



写真の中の笑顔が、やけに遠く見える。


どうでもよくなったわけではない。
ただ、そこにもう“感情”を置く場所がなくなっただけ。


「たまに会いにきてたのかもしれないけど。それなりの感情はあったのかもしれないけど。……でも、私には写真に写るこの子が嬉しそうにも、幸せそうにも見えないよ」


静かな時間が流れる。
瑠維の手が、何かを言いたげに動いたが、結局そのまま膝の上で止まった。


「どうでもいいっていうより、ただ“受け入れた”んだよ」

瑠維「……受け入れた?」

「家族がいない“自分”を。……ただ、受け入れただけ」



そうすることで少しは楽になれた自分がいた。
考えないようにすることで、自分は普通なのだと。
そう思えた。