飛鳥「時雨は、大事にしてくれるのに?」
「……そうだね」
そんなことは、分かっている。
きっと時雨は、私がどんな人間でも離れていかないことも。変わらないことも。
飛鳥「俺たち、前に会ったことあるよね?」
「……」
飛鳥「つい、最近思い出したけど。母さんの葬儀に来てただろ」
その言葉に、胸が小さく跳ねた。
藤浪飛鳥ーー名前だけはずっと知っていた。
飛鳥「印象的だった。雨の中、傘もささずに……遠目から運ばれていく母さんを見てたから」
冷たい雨の音。
黒い傘の群れ。
遠くで流れていた讃美歌の旋律。
あの日のことはお互いあまり思い出したくないだろうに飛鳥は聞いてくる。
飛鳥「どうして、あの場所にいたの?母さんと、どういう関係だったの?」
関係ーーそう言われても、明確な答えなんてない。
私自身、わからなかった。
飛鳥の母ーー八重さんと初めて会ったのは、小5の時だった。
ちょうど、風邪を引いて……学校を早退して、一人で帰っていたあの日。
