「せっかく着替えたのに、なんで?」
時雨「いいから。……着ろ。さっきの続き、いまされたいか?」
低く押し殺した声。
顔を見上げれば、時雨の表情はいつもより険しく、
その瞳には明確な怒りが宿っていた。
周囲の男たちが“視線を逸らす”のがわかる。
何も言わなくても、時雨の空気がそうさせていた。
その言葉でーーさっきのことを思い出す。
唇の熱、息の音、そして残った痕。
素直にいうことを聞いておこうと慌てて頷く。
パーカーの中に腕を通す。
時雨の匂いがふっと鼻を掠め、ドキドキする。
翼「時雨って、独占欲の塊だよな笑」
戻ってくる途中、時雨が私につけたキスマークというものを翼が見て笑いながらそう言っていたのを思い出す。
「……時雨のせいで、恥ずかしかった」
パーカーを脱いだ時雨はその肉体美を周囲に晒していて、少しのむかつきとパーカーから漂う時雨の匂いと温もりに複雑な感情が湧く。
飛鳥「時雨、レイちゃんのそんな姿、誰にも見せたくないんだろうな笑」
隣にきた飛鳥が穏やかに笑いながら、翼を絞めに行った時雨を見ている。
飛鳥にこうやってちゃんと話しかけられたのは初めてだ。
飛鳥「あいつに愛されているんだね」
「……」
飛鳥「嬉しくないの?」
「……それになんて答えるのが正解なの」
私の表情が曇っていたからか、飛鳥は少し驚いたように目を瞬かせた。
ーー嬉しくないわけじゃない。
時雨から向けられるものは、純粋に嬉しい。
だけど、私にはその愛もその感情も重い。
繋がれている足枷の重りが、どんどん大きくなるそれを、外すことは、きっと私を終わりにさせるだけ。
