甘南「あれ?レイちゃん、顔赤いよ……熱あるんじゃない?」
戻った私を見た甘南が、心配そうに首を傾げる。
だけど、さっきの熱が冷めていないだけだ。
「いや、大丈夫」
翼「気持ち悪いくらい上機嫌の時雨くんとなにをしてきたのかね〜笑」
「今すぐその口閉じないと刺すよ」
翼「お〜怖ぁ。……ほら、これ」
渡されたのは、溶けかけのりんご飴。
何これ、と眉をひそめると、翼がわずかに気まずそうに笑った。
翼「さっき、葵のことで余計なこと言って怒らせたからその詫び」
「……別に怒ってなかったけど。ありがとう笑」
翼は普段から全体的にゆるくて、適当に生きているように見えるけど、こういうときだけやけに気が回る。
りんご飴を見つめていると、甘南が不思議そうに首をかしげた。
甘南「……あれ?レイちゃん、甘いもの苦手じゃなかった?」
「……うん。甘いのは基本、好きじゃない」
翼「は?でもレイ、前に祭り行った時、りんご飴食ってたじゃん。めっちゃ嬉しそうに」
3年くらい前だっただろうか。
あの子がまだ、元気だったとき。翼とあの子と葵と4人で行った祭り。
月夜は用事で来れなく、謎のメンツで行ったっけ。
「……そうだったっけ」
曖昧に笑って答えるけど、心の奥が少しざわめいた。
記憶にはない。でも――確かにその“味”だけは覚えていた。
この味は、どこか懐かしいような感覚になる。
甘南「そうだ。レイちゃん、これ」
「……こ、れは」
半ば強引に渡された紙袋の中には、さっき甘南が勧めてきた、あの白いフリルのビキニ。
甘南「絶対似合うと思うから、買っちゃった!」
ニコニコしている甘南。
……これを、着ろと?
なんの罰ゲームだろう。
白なんて、もっと女の子らしくて、素直で、可愛い子が着る色だ。
そんな色が似合う人間じゃないのに。
でも、そんなふうに思っている私を見て、
甘南が心底楽しそうに笑っているから――
なんだか、断れなくなってしまった。
