ANEMONE〜恋に終わりを告げたなら



甘南「あれ!? やっぱりレイちゃんだ!」


鉄のたこ焼き屋台の前で、暑さに負けてダラダラと外の風にあたっていたときだった。
人ごみの向こうから弾むような声が聞こえて、顔を上げる。


そこにいたのは、日焼け止めの香りがしそうな白いワンピース姿の甘南と、隣に立つ遥斗だった。


「……」

遥斗「こんなところで、なにしてんだ」


私の格好を見て、一瞬目を丸くする。
Tシャツに短パン、首にタオル。
色気も何もない、完全に庶民仕様だ。
それが、朝倉組の出店の中に立っているものだから、そりゃ驚くだろう。


「なにって……手伝いだよ」

甘南「手伝い?」

「月夜ん家の手伝い。結構世話になってるし……タダ働きだけど」

鉄「お嬢、聞こえてますよ」


思ったより声が大きかったらしい。
中で鉄が苦笑しているのが見えた。

まぁ、仕方ない。
この炎天下、無償でたこ焼きを焼くのは、軽く拷問レベルだ。


遥斗「……まだ、朝倉と関わってるのか」

顰めっ面。
眉間に皺が寄ったその表情は、他人が見れば“怒っている”というより“脅している”に近い。
整った顔立ちだからこそ、余計に迫力がある。