ANEMONE〜恋に終わりを告げたなら



時雨「女が一人、あんな時間に出歩くな。心配するだろ」

「……施設にいたくない時、よく行ってるから」

時雨「だったら、俺に連絡しろ」


付き合ってやるから、と。そう言う彼にドキドキして、彼のことをどんどん好きになっている自分が嫌になる。


「……めんどくさくなったんじゃないの?」


こうやって、聞く必要のないことでも聞いてしまう自分が。答えを知りたがっている、自分が。


滑稽に思えてくる。恋をしても、意味ないのに。恋をするだけ、無駄なのに。


時雨「なにが?」

「あれから来なかったから、……顔を合わせたくないんだと思った。泣いたりなんかしたからめんどくさくなったのかなって」

時雨「……待ってたのか?」

「……う、ん」

時雨「家のことでちょっと忙しかっただけだ。お前が呼ぶなら、すぐ行く」


些細な言葉に嬉しくなる。まるで特別だと言われているみたいで。


「な、んでそこまでしてくれるの」

時雨「言っただろ笑。気に入ってるって」


出会って数日。
彼は私の名前も知らない。彼女がいるのにと、心が荒んでも。


彼にとって遊びでも、気まぐれでも。


嬉しかったんだ。


「送ってくれて、ありがとう」

時雨「あぁ……携帯貸せ」

「持ってない」


そう私がいうと施設の玄関先に置いてあった紙とペンを持ち何かを書きだす。


時雨「なんかあったら、電話しろ。夜に一人で出歩くな」

「う、ん……」


帰っていく彼の後ろ姿と渡された彼の連絡先が書かれたメモを見ながらかけることはないだろうなと笑いがでる。