ANEMONE〜恋に終わりを告げたなら



時雨「買い出しは、いつもお前がしてんのか?」

「いつもじゃないけど……施設で一番年上だし、学校にも行かない暇人だから笑」

時雨「……」

「……笑。親が迎えにきた子もいれば、里親に引き取られた子もいる。18歳過ぎて出ていった人も。私は来年には出るつもりだけど」


施設での生活もあと少しだけ。
高校に入ったら施設を出る。真琴さんは高校を卒業してからでもと提案してくれたが、私は早く施設から出たかった。


施設が嫌いなわけでも、嫌なわけでもなかったけど。居心地が悪かった。私がいない方が、真琴さんや志帆さんは気を遣わなくて済むだろう。


時雨「……施設にはいつから?」

「産まれてすぐだって」

時雨「……」

「親が誰なのか、知ってはいるけど会ったことなければ、見たこともない」


ぽつりと口に出すと、自分でも不思議なくらい無感情な声になった。


時雨はしばらく黙っていた。
けれどその瞳の奥に、何かを探るような光が一瞬よぎった気がした。


時雨「……そうか。でも、あんな夜中に出歩いてたら施設の人、心配するだろ」

「……夜中?」


思わず立ち止まる。
彼に会ったのは昼間だけのはず。


時雨「一昨日、あの展望台にいたろ?」

「……来てたの?」

時雨「一人でいたそうだったから、声かけなかったけどな」


全然、気づかなかった。
人の気配には敏感な方なのに。