ANEMONE〜恋に終わりを告げたなら



中学3年の夏。
いつも通り学校をサボって、展望台に向かった。


昼でも夜でもここは静かで、人の気配などないのが当たり前だった。

その日もいつものようにベンチで一眠りしようと足を運んだのにーー
先客がいた。


ベンチに横たわる背の高い男。
目を閉じているのに、その整った輪郭は一目でわかるほどだった。


時雨「……誰だ」


気配に気づいたのか、男はゆっくりと目を開けた。
低い声で、冷たい光を宿した瞳がこちらを射抜く。


「あー……えっと、あなたに用はないんだけど」


私はそこのベンチで一休みしたかっただけだと伝える。

男は数秒こちらを見つめたあと、何故だか急に笑い出した。
さっきまでの鋭い視線とはまるで別人のような柔らかお笑顔。
陽の光を受けたその表情は驚くほど綺麗で、不覚にも見惚れてしまった。


時雨「悪かったな。誰もいない場所だと思ったから、つけられでもしたのかと」

「……はぁ」

時雨「俺のこと知らないのか?」

「……どっかで会ったことあったかな。人の顔とか覚えるの、苦手で」


綺麗な容姿だから芸能人なのか?そういうことに疎いからよく分からない。


時雨「いや笑……おもしれぇ女。じゃ、俺は一休みしたから」


そう言って、歩きだす後ろ姿にスタイルもいいのかと感心する。


これが、時雨と初めて出会った日だった。