しばらく人通りのない道を歩く。暗く街灯もない道は、不気味にも今の私の心情を表しているかのよう。
背後からエンジンの唸りが近づいて来た時、私は反射的に立ち止まった。
バイクはゆっくりと減速し、私のすぐ前で停まる。
ヘッドライトの光が、暗がりに光を差す。
「……し、ぐれ」
時雨はヘルメットを乱暴に外し、迷いもなく私に歩み寄ってきた。
気づけば、私は大きな腕の中に引き寄せられていた。
夜の冷たい空気の中、その腕は暖かくて、泣きそうになった。
時雨「泣きたいなら、泣けばいい。……俺しかいない」
ーーやっぱり、時雨は優しい。
何も変わっていない。
あの時も、こうして同じようにそう言ってくれた。
私が全部悪いのに。逃げ出したのは私の方なのに。
時雨の優しい瞳が、声が、存在が。私の中に入り込んで、逃げられなくなってしまう。
時雨の瞳が、声が、体温が。
私の中に入り込んで、逃げ場をなくしていく。
ずっと、忘れることができなかった。
ーー世界で一番好きだった人。
どんなに足掻いてでも、そばにいたいと初めて思えた人。
