『お母さん、また会いにくるから。それまで、元気にしているのよ』
ーーまた、だ。
また知らない声が聞こえる。何かを訴えかけている。
優しくて、ずっと聞いていたい声なのに。どこか遠い響き。
ズキズキと痛むこれはサインだ。
私が少しずつ、消えていく。
意識のどこかで、カウントダウンが始まっている。
『置いていかないで』
『レイも、行きたい』
小さな女の子の、小さな願い。
それは空気に触れた途端に崩れて、
まるで霧のように消えていく。
胸の奥で何かが軋む。
耳を塞ぎたかったけど、手は動かせなかった。
「……うざい」
思わず口から溢れた低い声に、
隣の甘南が心配そうに首を傾げた。
甘南「レイちゃん?」
視線を伏せたまま、吐き出すように呟いた。
「何年も出てこなかったのに……今さら出てくるなよ」
独り言のようなそれは、目の前の誰に向けたものでもない。
自分自身に・・・レイに向けたもの。
思い出したくないって、自分から眠りについたくせに。
私に全部押し付けて、どこか消えたくせに。
触れないようにしてきた箱の中身は開けても空っぽで。
その空っぽを埋めるために、行き場のなくした感情がただ彷徨い、荒れ狂う。
逃げるように去った私の表情はきっとあまりにも情けなかっただろう。
そこにあったのはーー醜い感情だけだった。
