ANEMONE〜恋に終わりを告げたなら


『お嬢、走ったら転びますよ』

『大丈夫〜。御堂も早くきて』


悲しそうに、何かを訴えるかのように語っていた御堂という男は印象的だった。


何がそうさせているのか分からなかったけど、


“懐かしい”


そう感じた。


男は私に気がついたようで一瞬だけ驚いたように目を見開いた後、すぐにあの時と同じ、深い影を宿した瞳でこちらを見つめてきた。


優香里「えぇ……娘とお出かけしたみたいで楽しかったわ」


その言葉に、遥斗が小さく眉を寄せる。


遥斗「お袋……」


……本当に、嫌になるな。黒くてモヤのようなものが心の中を支配し、感情を醜くする。


心の底から、消えてしまいたいと思うほど。
こんな些細なことで動揺してしまう自分が、


弱くて、醜くてーーたまらなく嫌いだ。