ANEMONE〜恋に終わりを告げたなら



遥斗「お前こそ何してんだ」

遥斗の低い声が響く。

瑠維「俺は母さんと衣乃の付き添い」


二人のやり取りは、兄弟らしい空気を纏っていた。
私には遠い世界のやり取りのようで、場の片隅からそっとその様子を眺めていた。


ーーこの隙に帰ろう。

そっと足を引きかけたその時、背後から軽やかな声が響いた。


衣乃「瑠維〜こんなとこにいた」


振り返ると、夜道を小走りで近づいてくる女の子の姿があった。
髪を緩く巻き、ストリート系のカジュアルな服を着ている。


瑠維「衣乃……」

衣乃「もう探したよ。……あ、皆さんもいたんですね」

衣乃はぱっと周囲に笑顔を向けた後、私の方を見て黒尾を傾げた。

「あれ、レイ先輩?」


彼女は南浜の同級生で、クラスメイト乃周防実乃の妹だ。
実乃は私に対してどこか一線を引いている他の人とは違い、唯一普通に話しかけてくる稀な存在。


ギャルぽい見た目の割に煩くなく、一定の距離感を保ってくれるから、私は嫌いではなかった。
少なくとも、煩わしいタイプではない。


瑠維が不思議そうに尋ねる。

瑠維「知り合いなのか?」

衣乃はにこにこと笑いながら、あっけらかんと答える。

衣乃「うちの高校で知らない人いないよ笑。絶世の美女だし高嶺の花で有名だもん」

甘南が横で思い出したように声を上げる。

甘南「あ、そっか。衣乃ちゃんも南浜だったね」

衣乃「はい。……でも、レイ先輩大丈夫ですか?お姉ちゃんから体調悪いって聞いてましたけど」

その言葉に甘南がぱっとこちらを見た。
目を丸くして、眉を下げ、心底申し訳なさそうな顔をする。


甘南「え!?レイちゃん体調悪かったの?」

まだ少しだけ体が重いのは事実だが、今さら気にされても仕方ない。

今日ここまで引っ張り回してしまったことを後悔しているらしい。

ーー別に責める気なんてないけど。