ANEMONE〜恋に終わりを告げたなら



「来たみたいだね」


会計を済ませ、ドアを押して外へ出ると、夜風が頬を撫でた。
その先には東海の連中が勢揃いしていた。

三咲が真っ先にこちらへ歩み寄る。
顔には安堵と苛立ちの混ざった複雑な色が浮かんでいた。


三咲「心配しただろ……。この間みたいに攫われでもしたらどうするんだ」

隣で甘南が小さく頭を下げた。

甘南「ごめんなさい」

私は一歩だけ下がり、吐き出すように言った。

「……じゃあ、私は帰るから」


急に体が重く感じる。
風邪のせいなのか、どっと疲れが押し寄せてきて、帰りたい気持ちしかなかった。


背を向けかけた時、背後から短く呼ばれた。


三咲「おい」


振り返ると、三咲がこちらをじっと見つめていた。


「……まだ何か用でも?」


苛立ちを抑えきれず、少し冷たく返す。
帰ろうとしていたのに引き止めないでほしい。

三咲は少し気まずそうに目を逸らし、それからふいに頭を下げた。


三咲「妹が迷惑かけた」


不器用なりの精一杯の誠実と言ったところか。


甘南「ありがとう、レイちゃん。……もしレイちゃんがよかったら、友達になってくれないかな」


ーーあぁ、やっぱりこの子はあの子は似ている。


昔の、あの無邪気で愚直な子。
こんな私にまで手を伸ばそうとする、そのまっすぐさが同じだ。

だからこそ、ためらいも迷いもなく拒絶の言葉が口から溢れた。


「悪いけど、私は友達なんていらない」


夜風が少し強く吹いて、髪が頬に触れた。
甘南が驚いたように目を見開くのが視界の端に映る。


大切なものができれば、人は弱くなる。
失った時の喪失感を、私はもう二度と味わいたくない。