翼『お〜珍しいな笑。レイが俺に連絡してくるの。なんかあったのか〜』
気の抜けた声がスマホ越しに響く。
東海で連絡先を知っているのは翼くらいだ。
もう一人、番号を知ってはいるけど、一度もかけたことはない。
「今、そっちのお嬢様と〇〇カフェにいるんだけど。迎えに来てくれない?一人じゃ帰りづらいみたいだから」
翼『へえ〜。レイと一緒だったんだな〜。あいつら今、血眼になって探してるぞ〜』
「私といるの知られたら面倒だから、翼一人で来てよ」
翼『ちょっと待ってろ〜。『おい、翼!甘南があいつといるってどういうことだよ!』』
電話の奥から聞こえたのは、明らかに苛立ちを隠せない三咲の声だった。
翼が裏切って告げ口したのだと理解する。
ーーあいつ……。
三咲『おい、妹に何もしてねぇだろうな』
電話越しに聞こえる低い声に、肩をすくめる。向かい側で、甘南が不安げにこちらをみている。
「……何かした方がいいの笑」
三咲『・・・・』
「女に手をあげる趣味はないよ」
三咲『……甘南に代わってくれないか』
スマホを甘南に向ける。
「……代わって、だって」
甘南は驚いたように目を瞬かせたが、恐る恐るスマホを受け取り、
「もしもし……お兄ちゃん……」と小さな声で話し始めた。
電話の向こうの声は聞こえないが、甘南の方が少し縮こまり、目線を泳がせているのが分かる。
数分間のやり取りの後、甘南はほっとしたように息を吐き、ありがとうとスマホを返してきた。
