依織から、『お願い』を聞いた瞬間、全身の血液が顔に行ったんじゃないか、と思うほど顔が熱くなった。
絶対に赤くなっている、と思った俺は、照れている顔を依織に見られたくなくて、思わず顔を背けた。
いちいち照れる人だって思われたくなかった。
「あ…。―――さい」
依織が何かつぶやいた。多分「ごめんなさい」って言ったのだと思う。
でも、謝る理由なんてどこにもない。
それを伝えたかったけど、俺は一言も発する余裕がないくらい、照れていた。
自分で呆れる。ただ聞いただけなのに。
何か言いたかったけど、何も言えない。
その時、依織に呼ばれた。いつの間にか依織に顔を見られていた。
依織の顔を確認する余裕もなく、俺はとっさに体ごと背けた。
どうすればいいか分からなくなってきている。
「照れてるんですか?」
依織の声がする。なんだかからかわれているみたいで、居心地が悪い。
依織なら尚更だ。いつも俺にペコペコしていた依織が、俺をからかうなんて。
「いや。」
そう言ったけど、依織には聞こえていなかったらしい。
俺は、次に依織が発した言葉に、反応して反射的に依織を見てしまった。
「『可愛い』って言った? 俺が?」
「へ、あ、いや、あー。ごめんなさい!」
ものすごい勢いで謝られたものだから、俺は吹き出してしまった。
顔はまだ少し熱い。でも、依織も少し赤かった。
驚いた顔をしている依織を、置いて俺は歩き出した。依織が慌てて小走りで来る。
