カフェとライター ≪Backstory≫






普通の子が、俺らのような仕事のスケジュールで動き始めたばかりっていうだけでも、気力も体力も使うのに。

ちゃんと休めてんのか?ってくらい、休んでる姿が見えない。常に何かを見てる。人でも紙でも。



「ういちゃんは俺らの曲で何が好き?」

ちょっと休ませたいってのもあったんだけど。

休憩の傍ら、憂ちゃんに聞いてみる。

好きな曲…休む俺らを眺めていた憂ちゃんが

そう小さく呟いて

考え始めた。

何にしようか選んでいるのか、瞳を動かし自分の中で考え込む姿を見ながら

やっぱり、少し違和感。


サイン会や、ファンミーティングとかも時々あったけど、ファンの子って同じ質問したら、真っ先に自分の好きな曲1つは出てくるんだよね。




1つに絞れなくても、


絞れないからこそ曲名が次々出てくる。それなのに。絞り出してるかのような





そんな。

俺の中の実は大ファンで

戒李に頼み込んで密着をした説が崩れ始める。

返答を待っている中で、同じことを思ったんだろう。

「聞いてない?」



新が茶化すように聞く。

「いえ、!聞いてます、密着前に一通り…」

慌ててぶんぶん首を振りながら否定する憂ちゃん。密着前に…?一通り…?

「あ、元々好きじゃなかったパターンだ」新が突っ込む。



「えー!」

俺らデビューしてだいぶ経つのに!ってか絶対街中で聞かない方が無理なくらいいろいろタイアップしたりもしてるのに!

仕事するから、仕方なく詰め込んだ、みたいな言い方!



「興味なかったんだろ」

ダンス動画を確認しつつも

話はちゃんと聞いてる戒李が言う。