カフェとライター ≪Backstory≫

残念、と笑って新は教えるのを諦めた。憂ちゃんも気にはなっているだろうけど、戒李の反応を見て空気を読んで深堀はしないでおこうと思ったみたいだ。


彼女はわかってる。

表情から、空気からちゃんと距離を取る。


賢いんだろうなーとふとした時の立ち回りで思う。それは、元々彼女が持っているスキルなのか。身に付けざるを得なかった社会人経験からくるスキルなのか。

「きつくない?今、」



憂ちゃんに聞く。

斜め上の俺をチラリとみたあと、穏やかな笑顔を作って。

大丈夫ですよ、と。

「たまにあの時のことは思い出すんですけど、いまはのびのびできてます。大丈夫です」


「そっか」


「正社員じゃなくて、アルバイトみたいなものなのがちょっと情けないですけどね。出版社も契約社員ですし」



自嘲する憂ちゃん。


そういやカフェで文才買われて契約してライターしてるんだっけ。

それはそれですごくね?


「いやいや、仕事してるだけでじゅーぶんでしょ!」

「実際文句一つ言わずに戒李のスケジュールについてきてくれてるんだし!」

俺らのスケジュールがどれだけ大変か本当にわかってるからこそ。

今まで一般的な世界で生活してきた子が合わせて適応するのにどれだけ大変か知っている。

朝早い、夜遅い、休みない。