「さ、じゃ広末さん、弟さんも来たことだし、とりあえず帰れそう?」
保健の先生が、そう声をかけてくれたのでリクにこれ以上詮索されずに済んだ。

「あ、はい。お世話になりました」
私は頭を下げてお礼をする。

「どういたしまして。でも今日は安静にしてなきゃだめよ」

「はい」

保健室を出ると夕日が廊下に差し込んでいた。
あぁ、もうこんな時間。
腕時計を見ると、もう5時半をまわっていた。

「ひなちゃん、今日は私のせいで、遅くなっちゃってごめんね」

「全然大丈夫ですわ。ちゃんと神谷には連絡してありますし」

ひなちゃんの言う神谷ってのは、ひなちゃん付きの執事兼運転手だ。
白髪のとっても紳士なおじさまだ。

あぁ、神谷さんもずっと待っててくれたのか。

何だか皆に迷惑かけちゃったなぁ。

「でも、今日は意外でしたわ。まさかしいなちゃんが、クラス代表だなんて」

「え、しいなが代表?それ何てジョーク?」

「あら、リク君、ほんとですのよ。しかも立候補なさったんですから、そうですわよね、しいなちゃん」

そう話をふられて、

「あ、う、うん、ほらっこの学校に、こんなに長くお世話になってるのに私今まであんまり学校行事とか協力してなかったし、何となくそろそろやっとくべきかな~って」

「ふ~ん」

リクは絶対納得していない。

でも若槻連の事はまだリクには黙っておいた方がいい気がしたから言わなかった。