リビングのドアを開けるとリクはソファーに座って、さっき私が置いておいた谷口先生から預かった寮のパンフレットを眺めていた。

リクは私がリビングに入って来た事に気付いていたのに、私の方を見ようとしない。

「パジャマありがとう」

「うん」

「それ、今日たまたま矢口先生に会って、リクに渡してくれって頼まれたから・・・」

「うん」

「リクは寮に入るつもりなの?」

「うん、母さんに相談してみてオッケーが出たらだけど」

「そっか・・・」

・・・。

無言になってしまう。
リクもこっちを相変わらず全然見ようとしないし、
私も何を話したらいいか分からない。

今日学校で無視された事とか

さっき連れ込んでいた女の子の事とか

何でお風呂であんな風に体を洗うのかとか

寮に入るのは何でなのかとか

でも何だか聞けなくて
冷蔵庫からウーロン茶を出して
コップについで
一気に飲み干してから

「おやすみ」

リクにそう言って、
二階の自分の部屋に行こうと、リビングと廊下を繋ぐドアの取っ手に手をかけた。