Secret mode〜後輩くんの見てはいけないトコロを見てしまいました〜




――姉。お姉さん。


「……さっちゃん……」

「皐。兄貴。間にこの美雪(みゆき)がいて、三人兄弟。っていうか、気になるの皐の方なんだ……? 」

「ち、違う。あのお兄さんがさっちゃんなことに、衝撃を受けただけ」

「まあね。呼んでるの姉さんだけだけど」


皐さんと亜貴くんは少し年が離れてるように見えるけど、皐さんと美雪さんはそこまでの差はなさそう。
何にしてもお姉さんはやっぱりスタイル抜群の美人で、インパクトだけを比べればあの桐野・兄を凌ぐ。
チラリというかしっかり見えた姿は、まるでランジェリーブランドのイメージキャラクターみたい。
末っ子の亜貴くんは、二人からするとすごく可愛かっただろうな……。


「……亜貴くん、よく真っ直ぐ育ったよね……」


ちょっと皮肉屋で捻くれてるところもあるかなと思っていたけど、特殊な環境と癖の強い兄と姉に挟まれて育ったことを思うと、ものすごく真っ直ぐだ。
というか、好きってことは置いておいても、彼が一番まとも。
その性格だと、すごく苦労したんだろうな。
私だったら、グレそう。


「でしょう。子どもの頃からこんな感じで、そういうのに対して照れとか憧れとかまったくない思春期だったの家庭環境のせいだから。とにかく、誤解解けたよね」

「なになに? 本当に彼女連れてきたの? 会いたい会いたい! あっくんの、ほぼ初・彼女だもん」

「服着て。自分の。そしたら紹介する」


(亜貴くん、いい子だな……)


いや、皐さんも美雪さんもいい人なんだろうけど。
なぜかホロリとしてしまって、反対する気持ちも失せてしまった。



・・・



お姉さんがちゃんと自分の服を着て――亜貴くんのシャツとかだったらどうしようとか思ったけど、さすがにそれはなかった――不思議な宅飲みが開催されていた。


「あのさっちゃんとやり合うなんて、すごい。まず、謎のフェロモンにやられなかっただけでもすごいし、あれが効かないならあの無表情、怖いはずでしょ。それを食ってかかるなんて尊敬。私が妹じゃなかったら、たぶんさっちゃんに堕ちてるもんな」

「……そうでしょうか……」


私、女としておかしいんだろうか。
いやいや、そんなことない。
可愛いのも格好いいのも色っぽいのも、亜貴くんにはちゃんと感じてる。


「依花さんは、兄貴のこと嫌いなんだって。ね」


ソファの上、いつもと変わらず抱っこしてくる亜貴くんが、私の肩にそっと顎を乗せた。


「そ、それは、だって。亜貴くんに酷いこと言うから。私を試す為に言ってるだけで、本気じゃないのは分かるけど。……ああいうのは、嫌」


色気を感じてるなんて再確認してしまったせいで、お姉さんの前だというのに、いつも以上にドキドキする。


「この人、可愛いでしょう。……なんで、人の家に勝手に上がり込んで、風呂まで入るかな。バスボム? 今から使うつもりだったのに……姉が入った後じゃ、一緒に入ってなんて言えないよ。あー、最悪。ってか、鍵変えないと。寝込んだ時に貸した鍵を悪用するとか、どんな姉」

「ごめんごめん。まさか、あっくんに彼女できたと思わないから。割り切った関係じゃ、あんた部屋入れないじゃん」

「そうだけど……って、やめて。依花さんに嫌われたら困る。泣く。しぬ……印象悪くなるようなこと言ったら、縁切るから」


ともかく、兄弟三人、仲はいいんだな。
でも、お姉さんの目は厳しいかも。


「ベタ惚れ。……よかった、亜貴」

「そう、ベタ惚れ。だから、邪魔しないで。あ、そういえば。この前言いかけたことがあったんだ。プロジェクトの相談とかは、兄貴よりもこっちが適任かもよって。こんなだけど、一応ちゃんとデザイナーしてる」


弟を呼び捨てで呼んだお姉さんの顔は、何と言うか本当にお姉さんそのもので、私の方が切なくなる。
私が気に入られるかは自信がないけど、少なくとも兄弟という意味ではお兄さんよりも好感が持てた。


「ま、後は相性だよね。仕事の方向性もだけど、単純に気が合うか……見てのとおり、めちゃくちゃだし。でも、仕事はきちんとしてると思うよ」

「依花ちゃんだっけ。いつでも、何でも相談して。私、家業とは独立してやってるから、そのへんも気兼ねしなくていいし。仕事のことじゃなくても、さっちゃんに苛められたとか、あっくんが束縛して困るとか」


ひとまずほっとして、力が抜けてく。
部屋にいた美女はお姉さんだったし、仲良くなれるかもしれない。

――一緒にお風呂は、またの機会になりそうだけど。